SHISA GUIDE / PRICE & CRAFT
シーサーの値段は、
なぜこんなに違う?
工法を知れば、値段の理由が見えてきます。
型を使うシーサーと、完全手びねり。どちらが上という話ではありません。作り方が違えば、必要な時間も、届けられる価格も、表現できることも変わります。


工法は価格の理由であって、
価値の順位ではない。
Why the price differs
同じくらいの大きさでも、
値段が違う。
はいさい!しまんちゅ工房、店長のあらかきです。
お店でシーサーを見ていると、ときどき「こっちとこっち、同じくらいの大きさなのに、どうしてこんなに値段が違うんですか?」と聞かれます。
とても自然な疑問だと思います。僕自身もシーサーを制作し、しまんちゅ工房として21年間、さまざまな職人の作品を販売してきました。その立場からお答えすると、価格差の大きな理由の一つが、工法の違いです。
ただし、手びねりだから上、型を使っているから下、という話ではありません。作り方が違えば、必要な時間も、職人の手が入る場所も、同じシリーズを届けられる数も変わります。このページでは、その違いをできるだけ正直にお話しします。
Made in Okinawa
価格の前に、
僕たちが大切にしていること。
しまんちゅ工房では創業以来、沖縄で制作されたシーサーだけを取り扱ってきました。これからも変わりません。
理由は、「文化は、その土地に根差して育っていくもの」だと考えているからです。
シーサーは単なる陶器の置物ではありません。沖縄の風土、歴史、暮らし、祈り、そして人々の感覚。その中で長い時間をかけて育ってきた文化です。
だから僕たちは、作品だけではなく、誰が、沖縄のどこで、どんな方法で作ったのかまで伝えたいと思っています。
At a glance
まずは一目で。
「型」と「完全手びねり」の違い。
型を使用する工法
鋳込み成型、押し型、そして大まかな形だけ型で作り細部を手で仕上げる「半型」のような工法まで、型の使い方には幅があります。
- 形を安定させやすい
- 同じデザインを継続して制作しやすい
- 成形後にも修正・仕上げ・施釉・焼成がある
- 比較的価格を抑えやすい
完全手びねり
型を一切使用せず、陶土から頭、顔、身体、脚、尻尾、毛並みまで一体ずつ職人が形を作っていきます。
- 完全に同じ作品は二つとない
- 造形そのものに多くの制作時間がかかる
- 職人の個性が強く現れやすい
- 一点ものとしての希少性が高い
どちらが上、という比較ではありません。
Mold-assisted shisa
「型を使う」といっても、
作り方は一つではありません。
代表的なのが鋳込み成型と押し型です。さらに、身体の大まかな形を型で作り、表情・牙・毛並みなどを手びねりで仕上げる作品もあります。

石膏型。
鋳込みでは、泥状の陶土を石膏型へ流し込みます。型は同じデザインを安定して作るための大切な道具です。
型から出したら、完成ではありません。
成形直後の作品には、継ぎ目や表面の調整が必要です。ここから人の手による仕上げが続きます。
修正し、整える。
継ぎ目を処理し、形を整え、必要な箇所へ手を入れる。型を使っていても、完成までには細かな手仕事があります。

色をつくる。
施釉では、釉薬の厚さや掛け方によって焼き上がりの表情が変わります。型の作品でも、色は一対ずつ窯の中で生まれます。

僕自身も、
型を使って作っています。
僕、新垣信人自身も、鋳込みを使ってシーサーを制作しています。
だからこそ、「型だから手仕事ではない」「型だから価値が低い」という説明にはしたくありません。
型抜き、成型、継ぎ目の処理、修正、乾燥、施釉、焼成。型から形が出てきたあとも、完成までには人の手が何度も入ります。
僕自身が制作しているからこそ、そう感じています。
一対として形や大きさを揃えやすくなります。
同じデザインを長くシリーズとして届けられます。
造形時間を短縮できる分、迎えやすい価格にしやすくなります。
釉薬や焼成による色の表現へ力を注げます。
同じシリーズを、全国の暮らしへ届けられます。

「一点ものではない」ことにも、意味があります。同じシリーズを気に入った方へ、何年後でも同じデザインを届けられる。色違いを作る。贈り物として選びやすくする。
そうした役割も、ものづくりの大切な一つだと考えています。
Fully hand-built
土の塊から、
一体ずつ生まれる。
完全手びねりは、型を一切使わず、頭・目・鼻・口・牙・身体・足・尻尾・毛並みまで、一つずつ職人の手で作る工法です。


完全手びねりでは、同じ職人が同じ形を作ろうとしても、完全に同じ作品は二つとありません。
その日の土の状態、手の動き、表情の決め方。わずかな違いが、一体ごとの個性になります。
Same method, different expression
同じ「完全手びねり」でも、
作る人が違えば、表情も違う。

新垣信一
長い陶歴を持つシーサー職人。積み重ねてきた経験から生まれる力強さ、重心、造形の安定感があります。

新城優子
父・新垣信一に直接師事し、完全手びねりを学んでいます。同じ工法を受け継ぎながら、自分自身の表情を作っていきます。

From father to daughter
父から娘へ。
手で伝わっていく技術。
父・新垣信一と、娘であり僕の妹・新城優子。妹は父に直接弟子入りし、隣で土に触れながら、手びねりの技術を学んでいます。
同じ工法を学んでも、最後に生まれる表情は同じではありません。そこに、その人自身の感性が現れてきます。
同じ手びねりでも、手の動きは違う。
制作途中を見ると、造形の組み立て方や表情の作り方にも、その人らしさが現れます。
受け継ぎながら、自分の表情へ。
父の技術を学びながらも、完成した作品には別の感性が現れます。これが「作家性」の面白さです。
Artist's hand
手びねりには、
作り手そのものが現れる。
完全手びねりでは、一人の職人が最初から最後まで造形することが多くあります。
目をどこに置くのか。口をどれくらい開くのか。毛並みを細かくするのか、大きく見せるのか。身体を低く構えるのか、胸を張らせるのか。
設計図に数字では書ききれない部分です。僕たちは、そこに現れる違いを「作家性」として見ています。
同じ「シーサー」という題材なのに、職人によってまったく違う顔になる。それも、シーサーを見る面白さの一つです。
Years of experience
2年、10年、30年、50年。
同じではありません。
手びねり作品では、その職人が何年この仕事に携わってきたのかという「陶歴」も、価格に影響します。
もちろん、長く続けていれば必ず良い作品、という意味ではありません。
ただ、目の位置、口の角度、身体の重心、造形のバランス、焼いたときの縮み方。長年の経験によって培われる、数字にしにくい技術や感覚があります。それも価格へ反映されていきます。
What makes the price
結局、何がシーサーの
値段を決めているのか。
シーサーの価格は、一つの理由だけで決まるものではありません。

価格には、形を作る時間だけではなく、乾燥、焼成、釉薬、窯の管理といった工程も含まれています。
いくつもの要素が重なって、最終的な価格になります。だから、見た目の大きさだけを比べても、値段の理由が分からないことがあります。
21 years with customers
21年間、お客様を見て
分かったこと。
好みは、本当に千差万別でした。
しまんちゅ工房を始めて21年。たくさんのお客様がシーサーを選ぶ姿を見てきました。
力強い顔が好きな人。優しい表情が好きな人。昔ながらの赤焼きが好きな人。鮮やかなブルーに惹かれる人。大きなシーサーを玄関に置きたい人。小さな一対を室内に迎えたい人。
手びねりに惹かれる人もいれば、型を使ったシリーズを気に入る人もいます。
長く販売してきたからこそ、僕が「こちらの方が上です」と決められるものではないことが、よく分かるようになりました。
THE FINAL CHOICE IS YOURS.
「この子を迎えたい。」
値段の理由を知ることは、大切です。でも、最後に守り神を迎えるのは、僕たちではありません。皆さんです。
写真を見た瞬間に気になった。顔を見て、なぜか離れられなくなった。家の玄関にいる姿が想像できた。そんな感覚も、大切にしてください。
守り神を迎える皆さん自身の感性に従って選んでください。
See the works
工法を知ったあとに、
もう一度シーサーを見る。
知識を正解にするためではなく、自分の「好き」を見つけるために。実際の作品を見比べてみてください。
FAQ
シーサーの値段と工法、
よくいただくご質問。
型を使ったシーサーも「手仕事」なのでしょうか?
はい。型を使用して形を安定させる工法でも、型抜き、継ぎ目の処理、修正、乾燥、施釉、焼成など多くの工程があります。型をどこまで使い、どこから手で仕上げるかも作品によって異なります。
完全手びねりは、なぜ価格が高くなりやすいのですか?
型を使わず、顔・身体・脚・尻尾・毛並みなどを一体ずつ造形するため、制作時間が長くなりやすいこと、一点ものとしての希少性、職人の経験や作家性などが価格へ反映されるためです。
値段が高いシーサーほど、良いシーサーですか?
そうは考えていません。価格には工法や制作時間、陶歴、大きさ、焼成、釉薬などの理由がありますが、それは価値の順位ではありません。最後は、ご自身が「この子を迎えたい」と感じる一対を選んでください。